ジョージ大塚さんは演奏を聴くと非常に「個性的」で
ほとんど奇をてらっているのではないかと思われる
ほどですが、話を聞いてみる意外にオーソドックスな
哲学をもってやっていることが分かります。
(ということももちろん長い付き合いのうちにだんだん
分かってきたことで、初めて会ったころは「このおっさん
昨日と今日とで言うことが正反対じゃねえか?!」
とびっくりしたもんです)
ここでその内容(あくまで私の推測ですが)をご紹介
しましょう。
まずは「大原則=公理」から、
1.スイングしなければ意味がない。
実にオーソドックスですね。何もいうことはありません。
スイングというのはJAZZ用語ですが、これを「それぞれ
の音楽スタイルにおけるグルーブ(ノリ)」といいかえれば
ほとんどすべての音楽に通用するといっても過言ではないで
しょう。
2.JAZZは即興が命である。その時感じたものを
演奏すべきだ。
これも正論ではあります。JAZZ好きの人でこのテーゼ
を正面から否定できる人はいないでしょう。
この2つの「公理」から以下のような、「諸定理」が導かれ
ます。
(1.からメロディー奏者にたいするアドバイスとして。)
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1−1 ジャストのタイミングで弾かなければいけない。
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1−2 シャストのタイミングで弾いてはならない。
(2.から「練習」に関する意見として。)
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2−1 「練習で覚えたことを本番で披露」というのはダメ
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2−2 従ってジャズは(本質的に)練習できない
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2−3 「俺」はいつも練習を欠かさない
矛盾してますね。「公理」が間違っていたんでしょうか???
そんなことはありません。実はジョージ氏自身は口に出すことは
ないですが、「隠された公理?」として、
0.音楽(大きく言えば芸術一般)は矛盾に満ちているものだ。
というがあるのです。
これを言っちゃうとあとは「なんでもあり」になってしまい、
事実上なにも言っていないのと同じという感じもしますが、
(個人的には)
極めてオーソドックスな音楽哲学的主張だと
思います。
で上のように次ぎから次に現れる矛盾に満ちた要求を、
どうやって総合し解決していくかが「音楽家の仕事」と
いうことになります。
話が大変抽象的になってしまいましたが、実際に
1−1と1−2の矛盾をどう克服するかという具体的な
話はそれなりに面白いので、
次に続きます。(これがまた長い話なんだ!)