Essay

セロニアス・モンク


 セロニアス・モンクは1940年代から60年代にかけて活躍したピアニスト、作曲家。
作曲、演奏とも強烈に個性的なため、スタイルを受け継ぐ人は殆どいない。 彼の残した70曲あまりの作品は今日においても「不思議さ」「謎」を失わず、 カバーするアーティストも後を絶たない。
 これらの作品の殆どが作曲者の20代までに書かれているということも驚異。 しかしモンク本人もこの謎めいた作品を十分に生かした演奏するまでには随分時間をかけている。 多くの名曲は初演が40年代だが、決定的な名演はそれより約10年経過したの1950年代後半に集中している。 共演するミュージシャンにに彼の作品を理解させること自体が難しかったのだろう。

 「八ヶ岳ジャズストリート」では毎ステージ必ず何曲かセロニアス・モンクの作品を演奏しました。 どれもジャズファンには有名な曲で、曲名を挙げれば、 といった作品です。
 どの曲もJAZZのルール、あるいは音楽のルールを1回転半ひねったという感じで、 解釈が難しい。にも関わらず聴いていると難しいというより、不思議でユーモラスで可愛らしい、 と感じさせるところが名曲の名曲たる所以なのでしょう。
 このように非常に魅力的なモンクの作品ですが、実際に演奏してみるといろいろ問題があります。 普通ジャズの構成は、テーマ⇒アドリブ⇒テーマという形になっていますが、 モンクの曲の場合テーマが大変個性的なのに比較して演奏者によるアドリブが常識的になってしまいがちです。 モンク自身の残したレコードでも例えば"EVIDENCE"の初期のレコーディングでは、 ヴァイブラフォーンのミルト・ジャクソンが素晴らしいけれども極めてオーソドックスな アドリブを取っていて、その部分だけ聞いたら、 ごく普通の曲に聞こえてしまうということがあります。
 モンク自身のアドリブはもちろん曲のイメージと一体化した素晴らしいものですが、 他の人が「曲のイメージを活かした」演奏をしようとすると、だんだんモンクの演奏の コピーになってきてしまうという逆の問題が出てきます。
 逆説的ではありますが、ピアノというモンク自身が演奏した楽器で モンクの作品を演奏するのが実は(「コピー」と「無関係」の間に挟まれて) 一番難しいのかも知れません。
 それではギターはどうかというと、ギターは楽器の制限のため、モンクの複雑なサウンドを そのまま再現はできないという難しさはあります。しかし、モンクの曲を活かしつつ、 オリジナリティを表現できるという点では有利であり、 私もその利点はそれなりに生かせたと考えています。



<モンクの作品を聴く(お勧めアルバム)>

モンク自身の演奏では...

"Solo on Vogue"  Thelonious Monk(1954)
"Brilliant Corners"  Thelonious Monk(1956)
"Monk's Music" Thelonious Monk(1957)
というのが定評のある歴史的名盤でもあり、私自身が好きなアルバムでもあります。 実は今回のイベントの準備でモンクのCDもいろいろ買ってみましたが、10代の頃から 聴いていた上記3枚がやはり音楽的にベストだという結論に達しました。
 特に"Solo on Vogue"は高校生の時にLP盤からダビングしたカセットしか持っていなくて、 それも壊れてしまい、このたびCDを買いなおしたのですが、久しぶりに聴いたら実にいろいろな 発見がありました。自作のシンプルなスケッチなのですが、彼のコンセプトが とても聴きやすい形で示されています。

モンクをギターで弾いた作品では

"Evidence"  Steve Khan(1981)
というギタリスト、スティーブ・カーンのアルバムが出色。
  ⇒本人による解説 http://www.stevekhan.com/discog6.htm

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