Essay

演奏の収支決算


 といってもお金の話ではありません。 JAZZの演奏って、本当に情けないほど儲からないんで 最初からお話にもならんのですが。

 で、何の話かというと、 「音楽も支出ばかりだと続かん」ということです。 ここで、「支出」とはつまり、人前で演奏する仕事の ことです。これは金銭的には(一応)収入につながりますが、 音楽的には「支出」ではないかと思うわけです。 で、この支出ばかりが続くと音楽上の「金欠」つまり、 音楽をやる上での最も大事な「自発性」というのが、薄れて きてしまいます。わかりやすくいえば「お仕事」になって しまうということですね。「仕事」なんだけど、「お仕事」 じゃ駄目、というわけです。(矛盾してるみたいだけど、 わかるでしょ)。これももちろん個人差があり、私のように 非才の輩は、演奏が3日も続くと、もう不安になってくるという有り様 ですが、やればやるほど創造性が湧いてきるという才能豊かな 人もいます。しかしどんなすごい奴でも、支出だけを続けるのは やはり不可能でしょう。松任谷由実なんかは、素晴らしい才能の人が 20年間ズーっと支出を続けた結果、完璧に「必殺お仕事人」 になってしまった例ではないでしょうか。

 それでは音楽的な「収入」とは何かといえば、一言でいうと 「仕込み」ですね。練習とか、レパートリーの検討とかは、 もちろん大事な「仕込み」ですが、これもあまり支出に近いところ での仕込み(明日演奏する曲を練習とか)だと、やはり 「自転車操業」という感じがします。ユーミンがラジオ番組で、 若い人の投書を集めるなんていうのもこれでしょう。(ネタひろい?) 本当は支出と遠いところで収入したいものです。

 自分のことをいえば毎日バッハを弾くというのが、かなり支出から遠い部分 での収入にあたります。 他人の演奏を聴くというのも重要な仕込みですが、演奏者の悪い癖 として、「これはどういう音使いか?」「参考にできるフレーズ?」 みたいな聴き方をしがちということがあります。
本当は何も考えずとにかく楽しむというのがよい仕込みになるんですが。 それで参考にしたくてもできないような、なるべく自分がやっているのと 懸け離れたジャンルのをあえて聴いたりもします。

 もっとも、わたしの場合は、もう少し支出(演奏の仕事)が増えたほうが いいとは思うんですが。

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